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カテゴリー: 読書感想文

パンドラの匣 感想

新潮文庫版 以下ネタバレあり 「正義と微笑」主人公の、少年期から青年期になるまでの物語。日記形式で書かれています。 挫折を感じるごとに、俳優になろうと思う主人公。兄は小説家を目指しているものの、作品はあまり書けていない様子が見られます。父はなく、長いこと伏せっている母と、作中で結婚する姉、その夫、伯母などとの関わりが書かれています。 姉が結婚して、主婦(おかみさん)へと変わってしまった場面が印象に残っています。カサカサに乾いていた。ふくよかなものが何もなくなっていた。利己的にさえなっていた。こんな表現が印象的でした。 一高受験の失敗など、挫折の話かと思って読み進めたら、劇団での成功を予感させる終わりが意外でした。 「パンドラの匣」結核の療養施設の話。主人公ひばりが友人に宛てた手紙の形式で書かれています。実は恋愛の話と言うところが面白かったです。 マア坊と竹さんという二人の女性に向けられたヒ…

あだし野に眠るもの

2019年11月29日読了 たぐいまれなる美貌と物腰の柔らかさから、宮中で人気を博している小野篁。彼には冥府の官吏という裏の顔があった。 以下ネタバレ注意 平安時代という設定にもかかわらず、「ミーハー」「トリオ」などのカタカナ語があったりと、やや雰囲気を壊している印象がありました。ライトノベルといえども、時代観を重視したい方は気に障るかも知れません。少年陰陽師を先に読んでいたので、言葉遣いが余計に気になったと思います。 話の雰囲気としては好みです。篁と融、どちらも相手のことを「危険を承知で飛び出す危なっかしいヤツ」と考えていたり、篁が(宮中では)融だけに取り澄ました顔でない、本心(に近い部分?)や素(に近い?)表情を見せていたりするところが良かったです。 やや何ありとはいえ、篁の過去が気になるので、続きも読み進めていきます。

塗り仏の宴 宴の支度・宴の始末

宴の支度 2019年11月20日読了宴の始末 2019年11月28日読了 以下ネタバレを含みます あらすじ 事件らしい事件は一つだけ 読み進めるごとに募る不安感 あらすじ かつて警官として赴任した村が消えた。関口巽は妹尾の紹介で知り合った光保に頼まれて、彼がかつて赴任した「へびと村」を探しに行く。織作茜を殺した容疑で逮捕された関口は、「自分がやった」「逃げていく自分を見た」と証言する。 一柳朱美は、尾国の紹介で静岡県沼津に暮らしていた。首つり自殺をしようとしていた男を助けたが、「成仙道」が鳴らす楽器の音で落ち着かない雰囲気の中、この男は再び自殺未遂をしてしまう。 「韓流気道会」を取材した中禅寺敦子は、話題の占い師・華仙姑処女と名乗る女性と知り合う。 上巻である「宴の支度」は短編集形式になっており、各話それぞれで物語が進む。下巻である「宴の始末」において、それぞれの事件が集約されて、謎が解か…

絡新婦の理

2019年11月9日読了 おそらく三回目の読み返しになるこの本。大まかな流れは覚えていても、「蜘蛛」の正体はすっかり忘れていました。 以下ネタバレを含みます あらすじ 世間を騒がせている目潰し魔を追う木場修太郎は、榎津礼次郎との共通の知人、川島新造にたどり着くも、川島は「蜘蛛に聞け」と言い残して行方をくらませる。聖ベルーナ女学園では、「蜘蛛の僕」を名乗るグループが行う儀式において呪いの対象にした相手が絞殺魔によって殺されていく。織作家は当主を失い、さらに娘の夫も絞殺魔によって殺害された。 目潰し魔と絞殺魔 これら背景も登場人物も異なる、全く別の事件と思われていた事柄が、「蜘蛛」を中心にして収斂していく事に引き込まれます。 目潰し魔と絞殺魔、どちらも猟奇的であり、それが同じ構図で起こっている点が読みどころと感じました。 作中人物はそれぞれ、自分が関わっている事件についてしか見えていません。京…

結城光流「まじなう柱に忍び侘べ」

成親・・・! 昌親兄ちゃんキレる! 播磨なども 以下ネタバレを含みます 成親・・・! 前巻であのような状態になった成親兄さん。嘘であって欲しい、何かの策であって欲しいと思っていましたが、やはりあれは現実でした。 成親ロス、しばらく治まりそうにありません。 じいさまの成親兄ちゃんに対する「馬鹿者」が泣けます。 昌親兄ちゃんキレる! 昌親兄ちゃん怖え。温厚な人がキレるとこうなるんだ…と。それも間違ったことを言っていないのがまた安倍家の人間らしくて好ましいです。自分が、兄弟が抱えている物を後から知ることの辛さが滲み出ていました。昌浩だけに辛いことを負わせず、自分が封印をしたところが素敵でした。 播磨なども 播磨は、こっちも辛い状況です。主を失って生きていなければならない辛さや苦悩。決してそこからの解放ばかりを目的として柱になるわけではないけれど、「そろそろ、許してくれないか」が重いセリフでした。…

齋藤孝「超速読力」

超速読とは、速読してコメントをすることです。文章の頭から順に読んでいくのではなく、要点を拾って読み、内容に対して的確なコメントを言う力を付けるというのがこの本のポイントです。情報収集のためには良さそうだと思いましたが、物語を楽しむには向かないと感じました。 要点だけを読むとしても、前提条件や語句・記号の定義を読み落としたら誤読しそうです。資料の後ろから読む・真ん中から読むで早く読めたとして、そこに重要なことが書かれてたとして、最初のほうに必要事項が書かれていない保証はありません。「この項目だけ知ればいい」ときにはいいが、それで全体を理解した気になるのは違うと思いました。 古典文学の例も紹介されていましたが、物語にはそこまでのストーリーを知った上で分かる文脈・楽しめる内容があります。名場面だけ切り取っても、なぜそこが名場面なのか納得できるのか、そこだけ読んで作品を読んだといっていいのか疑問で…

青柳碧人「浜村渚の計算ノート 9さつめ 恋人達の必勝法」講談社文庫

大好きなシリーズの9さつめ。(通算11巻目) 浜村渚の計算ノート 9さつめ 恋人たちの必勝法 (講談社文庫) 作者: 青柳碧人 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/04/16 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 浜村渚の計算ノート (講談社文庫) 作者: 青柳碧人 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2011/06/15 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 65回 この商品を含むブログ (54件) を見る 数学をはじめとする理系科目が排斥された中で、数学が得意な中学生の浜村渚が、警察に協力して数学テロ集団「黒い三角定規」に立ち向かうお話です。 以下ネタバレあり log.10 1を並べよ log.100 私と彼の不等式 log.1000 新宿恐竜大戦争 log10000 恋人達の赤と黒 エピローグ log.10 1を並べよ シリーズ中に洗脳系の話は幾つかありま…

夏目漱石「吾輩は猫である」角川文庫

開始日:8月25日 読了日:9月15日 途中までの感想 読み終わったの感想 この本を読んで良かったこと 以下ネタバレあり 途中までの感想 以前、別のブログで途中まで読んだ感想を書きました。 背景になっている事柄について知識がないせいなのか、よく分からない本だ、と言うようなことだったと思います。 まず出てくる言葉がいちいち分からない。注釈と本文を行ったり来たりするため筋が分からなくなる。注釈を読んでも、引用されている古典や、夏目漱石の周囲の人々のことが分からないのでピンとこない。台詞も、すぐに誰が話しているのか見失う。 書かれた時代のことをよく知っている人、古典や人物など共通の知識がある人で無いと読みにくいのかと思いました。しかし、本当にそうならば、古典的な小説として生き残らなかったのではないか?とも考えました。 単純に、私のポンコツ頭には馴染まない本だった、というのが正解なのかも知れません…

読書中「吾輩は猫である」

もう2週間近く読み続けていて、ようやく終わりが見えてきました。 正直に言って、私には面白さがよく分からない本ですが、惰性と見栄で読んでいます。 まず出てくる言葉がいちいち分からない。注釈と本文を行ったり来たりするため筋が分からなくなる。注釈を読んでも、引用されている古典や、夏目漱石の周囲の人々のことが分からないのでピンとこない。台詞も、すぐに誰が話しているのか見失う。 書かれた時代のことをよく知っている人、古典や人物など共通の知識がある人で無いと読みにくいのかと思いました。しかし、本当にそうならば、古典的な小説として生き残らなかったのではないか?とも考えました。 単純に、私のポンコツ頭には馴染まない本だった、というのが正解なのかも知れませんね。 とはいえ、猫の視点で人間社会を観察するという発想はなるほどと思いました。

北方謙三「水滸伝 一六 馳驟の章」

裏側の戦い 童貫 青蓮寺 結末へ向けて 裏側の戦い 読み終わってから、少し時間が経ってしまい、感想が曖昧になってしまいました。 以下ネタバレあり。 この巻は、兵站や糧道、闇塩の道など、梁山泊を支える裏側の戦いという印象でした。 信頼できる商人を得ることも重要な問題です。青蓮寺に見つからないように、かつ兵達を煩わせることのないようにするというのは、並大抵のことではありません。 派手で誰の目にも明らかな戦闘とは異なっても、裏側の戦いもまた激しいものです。 童貫 いよいよ童貫と史進がぶつかりました。 調練中の史進と、移動中の童貫の遭遇戦ですが、史進はたいしたことができないまま負けてしまいます。 梁山泊軍では特別な位置にある史進遊撃隊がこうもあっさりひねられるとは。今まで戦いに出ることがなく、強さは伝説に過ぎないとさえ思われることのあった童貫の強さが垣間見えます。 青蓮寺 致死軍による青蓮寺への攻…