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月別: 2019年12月

パンドラの匣 感想

新潮文庫版 以下ネタバレあり 「正義と微笑」主人公の、少年期から青年期になるまでの物語。日記形式で書かれています。 挫折を感じるごとに、俳優になろうと思う主人公。兄は小説家を目指しているものの、作品はあまり書けていない様子が見られます。父はなく、長いこと伏せっている母と、作中で結婚する姉、その夫、伯母などとの関わりが書かれています。 姉が結婚して、主婦(おかみさん)へと変わってしまった場面が印象に残っています。カサカサに乾いていた。ふくよかなものが何もなくなっていた。利己的にさえなっていた。こんな表現が印象的でした。 一高受験の失敗など、挫折の話かと思って読み進めたら、劇団での成功を予感させる終わりが意外でした。 「パンドラの匣」結核の療養施設の話。主人公ひばりが友人に宛てた手紙の形式で書かれています。実は恋愛の話と言うところが面白かったです。 マア坊と竹さんという二人の女性に向けられたヒ…

あだし野に眠るもの

2019年11月29日読了 たぐいまれなる美貌と物腰の柔らかさから、宮中で人気を博している小野篁。彼には冥府の官吏という裏の顔があった。 以下ネタバレ注意 平安時代という設定にもかかわらず、「ミーハー」「トリオ」などのカタカナ語があったりと、やや雰囲気を壊している印象がありました。ライトノベルといえども、時代観を重視したい方は気に障るかも知れません。少年陰陽師を先に読んでいたので、言葉遣いが余計に気になったと思います。 話の雰囲気としては好みです。篁と融、どちらも相手のことを「危険を承知で飛び出す危なっかしいヤツ」と考えていたり、篁が(宮中では)融だけに取り澄ました顔でない、本心(に近い部分?)や素(に近い?)表情を見せていたりするところが良かったです。 やや何ありとはいえ、篁の過去が気になるので、続きも読み進めていきます。

塗り仏の宴 宴の支度・宴の始末

宴の支度 2019年11月20日読了宴の始末 2019年11月28日読了 以下ネタバレを含みます あらすじ 事件らしい事件は一つだけ 読み進めるごとに募る不安感 あらすじ かつて警官として赴任した村が消えた。関口巽は妹尾の紹介で知り合った光保に頼まれて、彼がかつて赴任した「へびと村」を探しに行く。織作茜を殺した容疑で逮捕された関口は、「自分がやった」「逃げていく自分を見た」と証言する。 一柳朱美は、尾国の紹介で静岡県沼津に暮らしていた。首つり自殺をしようとしていた男を助けたが、「成仙道」が鳴らす楽器の音で落ち着かない雰囲気の中、この男は再び自殺未遂をしてしまう。 「韓流気道会」を取材した中禅寺敦子は、話題の占い師・華仙姑処女と名乗る女性と知り合う。 上巻である「宴の支度」は短編集形式になっており、各話それぞれで物語が進む。下巻である「宴の始末」において、それぞれの事件が集約されて、謎が解か…

絡新婦の理

2019年11月9日読了 おそらく三回目の読み返しになるこの本。大まかな流れは覚えていても、「蜘蛛」の正体はすっかり忘れていました。 以下ネタバレを含みます あらすじ 世間を騒がせている目潰し魔を追う木場修太郎は、榎津礼次郎との共通の知人、川島新造にたどり着くも、川島は「蜘蛛に聞け」と言い残して行方をくらませる。聖ベルーナ女学園では、「蜘蛛の僕」を名乗るグループが行う儀式において呪いの対象にした相手が絞殺魔によって殺されていく。織作家は当主を失い、さらに娘の夫も絞殺魔によって殺害された。 目潰し魔と絞殺魔 これら背景も登場人物も異なる、全く別の事件と思われていた事柄が、「蜘蛛」を中心にして収斂していく事に引き込まれます。 目潰し魔と絞殺魔、どちらも猟奇的であり、それが同じ構図で起こっている点が読みどころと感じました。 作中人物はそれぞれ、自分が関わっている事件についてしか見えていません。京…